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今月の健康コラム

お腹と背中の痛みに注意「慢性すい炎」

2020年5月11日

慢性すい炎は、アルコールの過剰摂取などが原因で起こるすい臓の病気です。発症すると、みぞおちから背中にかけての痛みがみられます。40~60代に多い病気です。慢性すい炎は長年かけて徐々に進行していきますが、早期に治療することで進行を抑えたり改善することができるといわれています。糖尿病やすい臓がんなどの合併症を引き起こさないためにも、病気の早期発見と進行段階に応じた治療を受けることが大切です。

慢性すい炎とは

 すい臓は、消化酵素を含むすい液を十二指腸に分泌して食べ物を消化する働きと、インスリンなどのホルモンを血液中に分泌して血糖をコントロールする2つの働きを担っています。慢性すい炎は、すい臓の炎症が長期間繰り返し起こることで働きが衰えていく病気です。本来食べ物を消化するはずの消化酵素であるすい液が、アルコールの過剰摂取などによってすい臓自体を溶かすことで引き起こります。その結果すい臓が線維化することで細胞が減少し、硬くなったり、すい臓の中に石(すい石)ができてしまうことがあります。

 すい臓の炎症はアルコールの過剰摂取のほか、胆石の詰まりによっても起こります。ストレスや自己免疫疾患も慢性すい炎の原因とされていますが、中には原因がわからないものもあります。これは「特発性慢性すい炎」と呼ばれており、女性に多くみられます。そのほか、喫煙者は慢性すい炎がより早く発症することもわかっています。

 慢性すい炎の代表的な症状は、長年にわたって繰り返し起こる、みぞおちから背中に抜けるような腹痛ですが、無症状の場合もあり、インスリンが減少し糖尿病になってから初めて慢性すい炎と診断される人もいます。

慢性すい炎の3つの病期と症状

 慢性すい炎の症状は、進行段階によって分類される3つの病期によって異なります。

 1つ目の「代償期」はすい臓の働きが保たれている状態で、すい液の分泌に伴って痛みが生じ、腹痛が起こります。痛みは数日の食事制限で回復するものから、入院が必要になる場合までさまざまです。

 2つ目の「移行期」になると、すい臓の働きが衰え始めるため、代償期に見られた腹痛は軽減しますが、だんだんと消化不良などの症状がみられるようになります。

 3つ目の「非代償期」には、すい臓の働きがほとんど失われ、消化不良に伴って下痢、脂肪便などの症状や体重減少が起こります。さらに進行すると糖尿病を発症します。この糖尿病はすい性糖尿病と呼ばれ、食べ物の消化不良と血糖値の調節が不十分になり、インスリンの低下に加えてグルガゴンの分泌も低下するのが特徴です。

慢性すい炎の検査、治療法

 慢性すい炎の進行を食い止めるには、早期発見と、長期にわたる通院・治療を続けていくことが重要です。画像診断は、身体への負担が少ない腹部エコー(超音波)検査や、MRI検査など進行段階や発症原因によってさまざまです。すい炎をおこすと血中の消化酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)、尿中のアミラーゼが上昇しますが慢性すい炎が進行するとすい臓が萎縮しはっきりとした上昇がみられないことがありますので注意が必要です。かかりつけ医と相談して適した検査を行いましょう。

 治療法も検査方法と同様に、段階によって異なります。「代償期」には、痛みが多くみられるため、鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬や抗コリン薬)を投与して炎症を抑え、再発・進行予防となる蛋白分解酵素阻害薬の内服を行います。これらが有効でない場合には、内視鏡的治療や衝撃波を利用してすい石を破壊する対外衝撃波結石破砕術、または外科的治療が行われます。「非代償期」には、消化酵素薬と腸の中が酸性に偏ることを防ぐために、胃酸の量を調節する薬を内服します。

 また、慢性すい炎の治療には断酒、禁煙が重要です。アルコールだけでなく、たばこも慢性すい炎の進行の一因となります。また、食事の面では栄養価が高く、消化に良い食べ物を選ぶことが大切です。症状が出ている場合は、医師の指示に従って脂質を制限しましょう。

【慢性すい炎の治療のポイント】

①断酒する
アルコールの過剰摂取が一番の原因となります。
専門医療機関を受診し、断酒会などのコミュニティに参加するのもおすすめです。

②禁煙する
喫煙は慢性すい炎をより早く発症させ、病気の進行に拍車をかけてしまうことがわかっています。ニコチン製剤やニコチン離脱症状を和らげる薬剤を処方してもらいましょう。

③食事は適量をゆっくり食べ、油物や辛いものなど消化に悪いものを取りすぎない
すい臓の負担を軽くするために、日ごろから脂質の多いものや刺激物を避け、消化に良いものを食べましょう。消化を助けるためにも、よく噛んで食べる習慣を付けましょう。

④ストレスを避ける
ストレスを避け、リラックスして過ごすことを心がけましょう。

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